『時間が自由で給料が高い仕事』
時間が自由で給料が高い仕事なんてある!?
僕は仕事を探し始めました。
僕が持っている仕事上のスキルはかなり特殊でつぶしがききませんでした。同じ業界でしか使えないもので、全く違う業種に行くしか選択肢がありません。
年齢もそれなりに高くなっていましたし、全くの未経験で自由な時間を選べる仕事はそうそうはありせん。
僕の持っている資格は『運転免許証』だけです。
その他に多少英会話が出来ましたが、レベルは英検で言えば2級に毛が生えた程度。準1級には届かないでしょう。
意思の疎通は出来るけど、少し話が難しくなると理解できません。
仕事で使えるレベルではありませんでした。
タクシードライバー?
当時は今よりはネットの求人サイトが充実していなかったように思います。
たまたま『ハローワーク』のサイトを見つけ、試しに『英語』と入力して検索すると、翻訳会社や輸入業の会社の他にハイヤーの会社がヒットしました。
そこには、こう書かれていました。
『要普通運転免許』
『英検2級程度の英語力があれば尚可』
『年収700万円以上可能』
英語力は成田空港を利用する外国人の顧客の為に、多少出来るのが望ましい程度のものでした。
『運転免許証』だけで出来る仕事は配送やトラックなどの仕事しかないと思っていました。
それは肉体的にキツそうで、自分には出来る気がしませんでした。キツくなさそうな仕事では、高い給料は望めません。
『ハイヤーか…。仕事はキツくなさそうだし年収も高いな…。』と思いました。
ただし、ハイヤーは拘束時間が長いようでした。
その会社は、同時にタクシーのドライバーも募集していました。
そこには、こうありました。
『平均月収45万円』
『年収700万円以上可能』
『月の乗務11日から13日』
その時にはじめて、
『給料も高いし、働く日数も少ない!!』
『タクシー良いかも!!』』
と思いました。
タクシードライバーは仕事もキツくて、給料も安いイメージでした。
そのため、タクシードライバーの仕事は全く考えていませんでしたが、僕はタクシー業界について調べることにしました。
タクシー業界を調べる
今は、『タクシー専門の転職エージェント』がありますが、当時はありませんでした。
自分で調べるしかないのです。
タクシーは日常的によく利用していました。
仕事帰りのタクシーのなかで、ドライバーさんに話を聞いて給料の事や、勤務体系などいろいろ教えてもらいました。
ところが、人によって言っていることが、まちまちです。
『給料が良い、時間も自由』という人もあれば、『ぜんぜん稼げない、会社からのしばりもキツい』という人もいます。
『2ちゃんねる』でも検索してみました。
当時、日本のSNSは『ミクシィ』と『グリー』くらいしかなく、僕はほとんど使っていませんでした。
『2ちゃんねる』でも、同じようにネガティブな意見とポジティブな意見と両方がありました。いや、ほとんどがネガティブな意見でした。
ただ、ドライバーさんも、2ちゃんねるも、どちらもポジティブな意見を言っている人達の言葉が全くのうそだとは思えませんでした。
ネガティブな意見の人は、どこにでもいる『何にでも文句を付ける人』のように感じました。
少なくとも、勤務形態を聞く限り、自由になる時間は多そうです。
僕はハローワークで見つけた会社に電話をする事にしました。
説明会があるようなので、アポイントをとり話を聞いてみる事にしました。
タクシー会社のプレゼン
その会社は当時、銀座の近くにありました。
説明会に行くと、同じく説明を受けるメンバーが4、5人いました。
会議室のような場所にはプロジェクターを投影するスクリーンがありました。部屋を暗くし映像と音楽を流しながらのプレゼンテーションが始まりました。
素晴らしいプレゼンで、とても心を動かされるものでした。
そのプレゼンターは、声に抑揚があり、身振り手振りをまじえた説明はとてもわかりやすいものでした。
聞き終わった時にはある種の感動すらありました。
そして説明会の直後に、簡単な契約書のようなものを渡され、サインを求められました。
何人かがその場でサインをしていました。
それは緩い『労働契約書』のようなものでした。
その中の一人に『今、決めちゃうんですか?』と聞くと、興奮した様子で『こんな良い仕事ないでしょ!!』と言いました。
僕も思わず、その場でサインをしそうになりましたが、少し考えました。
『なんだかテレビの通販番組のようだなぁ』
『出来過ぎてる!』
それは『自己啓発セミナー』のようでもありました。
かなり怪しい気がしたので、ひとまずサインはせずに帰りました。
家に帰るとしばらくの間、何度もその会社から電話がかかってきました。内容は『いつ入社されますか?』と入社前提の確認です。
正直に言うと、あまりに素晴らしいプレゼンだったので、少しだけ、『やってみようか?』という気持ちがありました。
でも、しばらく考えて冷静になった僕はなんとかその勧誘を断りました。
